インパクト抜群の鉄骨番長はこうしてできあがった

奥田 鉄骨番長の企画は、2008年8月からスタートしています。「どういう施設を入れようか?」という「全くの白紙」からはじまりました。乗り物系のアトラクションで3つくらい候補があったと思います。そこから、現行の鉄骨番長の乗り物に決まったのですが、機種自体は世界で10番目の導入で、実をいうとそれほど珍しいという乗り物ではなかった。(もちろん、日本では初登場でしたが……)その、自動車でいえばいわば大衆車を、デザインや演出でいかに高級スポーツカーのように魅力的にしていくか? というのが、この鉄骨番長企画の醍醐味だったように思います。

宮尾 富士急ハイランドでは毎年夏にアトラクションをデビューさせています。その中には5年に一度、数十億円を投入して、今後5年間富士急ハイランドの顔になることが期待されるいわば目玉企画があり、その他の年には数億から最大でも10億円までのレギュラーのアトラクションを作るというローテーションになっています。鉄骨番長の場合は、後者の方だったんですね。それが、ネーミング、デザイン、プロモーション、CMなどの働きで、一躍目玉企画に躍り出た例といえます。

早川次郎 私は企画部の広報宣伝担当としてこの企画には関わっていたのですが、その当時は広報宣伝担当と企画開発が同じ部屋で机を並べていたということもあり、企画段階から関わらせてもらいました。まず、工程上、カラーリングをネーミングや演出よりも先に決めなければならなかったのですが、黄色と黒の工事現場を思わせるカラーリングになったきっかけはちょっと前に見た子どもの反応なんですね。工事現場のクレーンに子どもが食いついていて、すごく喜んでいたんです。で、鉄骨番長の外観を見たときに、クレーンに似ているな、と思い、黄色と黒のカラーリングを提案したんです。
奥田 イラストレータのデータに、黄色と黒で着色してみて、どんな風に見えるかのシミュレーションを行いました。「これが面白いね」ということで色が決まったのが2009年の1月頃でした。黄色と黒が決まった時点で、工事現場風という演出プランもほぼ決まりました。「絶叫第一」とか、看板を入れたのも覚えています。ただ、ネーミングには生みの苦しみがありましたね。部内でアイデア出しをしながら決めていくのですが、宣伝も開発も一緒になって「一人100個出せ」という感じでみんなで知恵を出し合いました。
早川次郎 数年前に導入したアトラクションで「トンデミーナ」というのがあるのですが、この機種そのものは世界にも同型機種があり、それほど珍しいものではありません。それを、ピザのスタイルにして、ピザーラとコラボすることで、ユニークなアトラクションにすることができた。できれば、鉄骨番長もそれくらいのインパクトが欲しかったんですね。

宮尾 その中で出てきたのが、高さとか、回転からイメージされる、空中遊泳とかのネーミングも出ていました。どちらかというと、アトラクションそのものは絶叫系というよりもある意味では爽快系のアトラクションでしたから。鉄骨番長の場合、高さがあるので、高さに弱い人にはかなり怖いのですが、動き自体は爽快で、ファミリーでも乗れるものでしたからね。

奥田 ネーミングをみんなで出したときには、「鉄骨番長」という名称はありませんでした。ただ、「鉄骨マスター」のように鉄骨がからんだネーミングと、「絶叫番長」ですとか、番長がからんだものは多かった。結局「鉄骨番長」で行こう! と決まったのが3月頃だったと記憶しています。そこから、リリースの出る5月までは早川次郎さんの方でCMなど広告展開の検討を進めている時期なのですが、私の方は大臣認定(法律に定めた基準を超える場合に必要とする認可事項)を取るのに国交省に何度も通ったことが想い出に残っていますね。回転ブランコでは、ジェットコースターの安全ハーネスのような座席上部から覆いかぶせるタイプの座席への安全対策が施せません。基本は腰のところのベルトなのですが、これは設計時の仕様では自分で外せてしまうんですね。それでは、お客様が空中で外してしまった場合に安全が保証できない、ということで大臣認定を申請する際に実施される評定委員会(大臣認定取得時に必要とする専門家を集めた委員会)から再検討を指示されました。最終的に、安全ロックを2重、3重にして、真ん中の穴に専用の金具を入れないとロック解除できない仕組みを導入したんです。それでようやく評定委員会を経て、国土交通省の審査後に大臣認定の認可が下りました。その後に建築確認申請の確認済証の交付を受けたのが5月。最初に大臣認定の申請を出したのが2008年の11月ですが、実際には鉄骨番長導入が決定した直後から事前協議を進めていたので、1年近くもかかっています。認可が下りるまで工事の着工ができないわけです。着工が遅れると、オープンにも影響しますから、かなり焦ったのも確かです。






