プロジェクトストーリーProject Story

Project Story 07

富士山ビュー特急

90周年の歴史に見合った、他にはない観光列車を走らせる

Project members

宮下 昌樹  Masaki Miyashita

宮下 昌樹
Masaki Miyashita

交通事業部 主任
2009年入社

入社2年目から交通事業部に所属。このプロジェクトでは、デザイン工事の計画立案から協力会社との打合せ、完成までのスケジュール調整、工事完了後の検査の取りまとめなどを担当。車両導入における補助金の申請も行った。

佐野 公亮  Kosuke Sano

佐野 公亮
Kosuke Sano

交通事業部
2012年入社

このプロジェクトでは、主に営業制度設計を担当。特急列車の運行に際して必要な運輸局への許認可手続を担う。富士山ビュー特急の運行開始にあたって、既存の特急料金の変更を実施し、それまで富士急行線では設けていなかった「指定席」を新設した。

荻原 渉  Wataru Ogihara

荻原 渉
Wataru Ogihara

交通事業部
2014年入社

交通事業部に鉄道担当として所属。このプロジェクトでは、飲食サービスの企画や備品の手配、グッズの企画・制作、乗務員の業務スケジュール管理や教育などに携わっている。鉄道車両としては山梨県初の飲食店営業許可申請も担当。

金子 泰樹 Yasuki Kaneko

金子 泰樹
Yasuki Kaneko

宣伝部 係長
2006年入社

富士急グループの各施設のプロモーションとして、宣伝広告、メディアの取材誘致、タイアップなどを担当。このプロジェクトでは、特設サイトの制作、テレビ番組の取材誘致と対応、プレス招待会の企画から実施までに携わった。

富士山の魅力も高める、エンターテイメント特急。

富士山を仰ぐ絶景を、車窓から楽しめる観光列車、富士山ビュー特急。
世界遺産を堪能する空間には、乗り心地から食事まで、極めて上質なサービスが求められる。
鉄道デザインの第一人者である水戸岡鋭治氏の監修のもと、中心となって開発プロジェクトを進めたのは交通事業部であり、
そのプロモーションのカギを握っていたのは宣伝部であった。
「富士山に一番近い鉄道」はいかにして生まれたのか。
2016年4月23日の開業に至るまでの道のりを、現在の取り組みも含めて紹介する。

Concept

創業90周年事業で、富士にさらなる「喜び」・「感動」を。

ワインレッドの上品なカラーが映える富士山ビュー特急は、長く愛されてきたフジサン特急2000系車両の引退に伴い、富士急行創立90周年記念事業の一環として導入が決まった車両で、節目の年に新たな「喜び」・「感動」をお客様に届けたいという強い想いがこめられている。また記念事業として新規性・話題性の高い付加価値を提供し、沿線の活性化、富士山周辺の魅力の増大にもつなげようと、大いなる期待が寄せられていた。

電車を用いたエンターテイメントということで、事例として挙がったのは、近年、主に地方のローカル線で人気を集めている観光列車だった。その多くは飲食を提供しているが、ホテル事業を展開する富士急グループとしては、参入しやすいビジネスモデルである。また山梨県内に同様の列車が走っていないことも、この企画を後押しした。「運行区間は大月駅と河口湖駅を結び、特急列車を使用するので乗車時間は45分です。贅沢なひとときを提供する『富士山に一番近い鉄道』ということで、メインターゲットは生活にゆとりのある大人の女性に設定されました」(宮下)。乗車中の短時間に、いかに心に残る体験をしていただくか、常にお客様を驚かせ、喜ばせてきた富士急行の腕の見せ所である。

Planning

Planning

“魅せる”独創的なデザインを損なわず、実用性を加える。

富士急行は、富士山ビュー特急のデザインをドーンデザイン研究所代表の水戸岡鋭治氏に依頼した。水戸岡氏といえば九州新幹線800系を手がけるなど、日本の鉄道デザインを牽引してきたインダストリアルデザイナーである。富士急行での実績も、富士登山電車をはじめとする鉄道車両の他、バス車両や鉄道駅など豊富だ。その水戸岡氏が内装デザインで推し出したのが、木のぬくもりを感じる空間であった。「窓も木枠になっていて、それを額縁に見立てることで、車窓からの景色を一枚の風景画のようにご覧いただけるようになっています。芸術鑑賞するように富士山を楽しんでいただく演出です」(宮下)。また寄木細工のように組まれた床は、水戸岡氏にとっても初の試みで、まさにアート空間を思わせる見栄えである。そのデザインをひと目見ようと、施工時には他社からも見学者が訪れたほどだ。「パースを見た時、本当にこのデザイン通りに製造することが可能なのかと半信半疑でしたが、仕上がっていく過程は驚きの連続でした」(宮下)。

交通事業部のメンバーも、列車の内の設計にあたって工夫を凝らした。通常の列車では座席下に設置されている暖房装置が、水戸岡氏が提案する四脚椅子を採用した車内では使えない。そこで宮下さんのアイデアにより、車窓下のスペースに暖房装置を備えることで解決できたのである。「入社して10年に満たない私や、入社3年目の荻原が、日本を代表する鉄道デザイナーとやりとりしながら仕事ができるのも、富士急行ならではだと思います」(宮下)。

45分間のエンターテイメントに適した、飲食サービスを提供。

提供する飲食物も、おもてなしの重要な要素である。45分という短い乗車時間を考慮して、また女性に喜んでもらうために、ホテル事業のノウハウが活かせるスイーツを提供することになった。「ハイランドリゾートホテル&スパのシェフパティシエに相談して、最初はスイーツをプレート(皿)に盛り付けて提供しようと考えていました。ところが給仕のオペレーションや座席での食べやすさを考えるべきだという水戸岡氏のアドバイスを受けて、玉手箱のようなボックス型の器に変更しました」(荻原)。

スイーツを楽しるのは、指定席制の特別車両である1号車のみ。全て自由席の2、3号車の料金が400円(特急料金込み)であるのに対して、特別車両のスイーツプランは4000円(小人は3000円)に設定されている。「料金は他社事例を参考に、水戸岡氏とシェフパティシエの意見を集約しながら、交通事業部で協議のうえ決定しました。特に水戸岡氏は数多くの観光列車を手がけており、貴重な意見をいただきました」(佐野)。特別車両は快適性も“特別仕様”となっている。2、3号車には、それぞれ57席と60席の座席が設けられている一方で、1号車は同じ車両サイズでありながら座席数は26席となっており、お客様はゆったりくつろげる車内で景色と食事を楽しめる。

Publicity

Publicity

魅力を伝える記者たちに、実体験の場を提供する。

広報宣伝活動については、特設サイトやポスターによる告知、テレビ番組など各媒体への取材誘致に加え、プレス招待会に力を入れた。開業直後の4月26日には、毎年50万人が訪れる「富士芝桜まつり」と組み合わせたプレスツアーを実施。ゴールデンウィーク直前、富士芝桜も満開間近のタイミングに、近年注目を集めている観光列車でのツアーを実施することで、プレスの関心を集めようという考えだ。「新宿から送迎バスを出して、記者の皆さんを招待しました。実際に富士山ビュー特急に乗車していただき、富士山周辺の名所をご覧いただくことで、いかに素晴らしい体験ができるのかを理解していただこうと考えたのです」(金子)。

招待会には47もの媒体が参加し、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、インターネットなど、様々な媒体で取り上げられた。その反響は大きく、新列車の車窓から富士山の絶景を楽しもうと国内外から多くのお客様が押し寄せ、富士山ビュー特急を利用した。開業直後は連日、満席の状態が続いたという。

Operation

Publicity

常に更なる“上質”を求めて、バージョンアップを繰り返す。

富士山ビュー特急を運行するにあたっては、専任のアテンダントを3名採用した。上質なサービスを提供するために、教育には重点的に力を入れた。さらにアテンダントは接客サービスの充実だけではなく、富士急行初の本格的な観光列車のスタッフとして、ニーズの把握という重要な役割を担っている。「月に一度は、アテンダント会議を実施しています。上司と私がアテンダントを集めて、お客様の声や発生したトラブルについて話し合い、接客の改善と向上を図ります」(荻原)。要望に応じて少しでも改善を図る姿勢は徹底していて、細部にまで配慮する。例えばフルーツサンドの包装について、お客様から「包んでいるラップを留めるテープが大きくて、はがしにくい」という意見が出ると、すぐさま検討してシェフパティシエに相談し、テープのサイズを小さくしたのだという。

提供サービスの質の向上に向けて、アンケートも実施している。提供しているスイーツについて、お客様から感想を募り、そのデータを反映させて新メニューを展開したこともある。「贅沢な時間をお過ごしいただく移動空間として、常にバージョンアップを続けていかなければなりません」(荻原)。

開業から好調な滑り出しを見せた富士山ビュー特急は、車窓からの美しい景観、空間の快適性、上質なサービスを味わえる、移動するエンターテイメントとして富士山周辺の魅力向上に一役買っている。荻原さんも語るように、常に更なる“上質”を求め続ける富士山ビュー特急が、今後どのような進化を遂げるのだろうか。広く事業を展開している富士急行にとっては、グループ間の連携によるシナジー(相乗効果)も含めて期待が膨らむ。

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